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レポート | 十勝千年の森 社長インタビュー

有限会社ランラン・ファーム「十勝千年の森」

十勝平野の大自然に調和するセグウェイ
環境に優しく、地域振興(地域づくり)にも貢献


「千年後の子孫に十勝の大自然を残す」という構想のもと、北海道の日高山脈と十勝平野にまたがる広大な大地に作られた「十勝千年の森」。大地を育み環境を守る、そして町おこしを通じて地域に貢献するという考えが、セグウェイ導入に結びついた。千年の森とセグウェイ ― この2つには共通点があり、その出会いは必然だったという。

地球環境を第一に考えた森づくり

林 克彦社長
林 克彦社長

広大な十勝千年の森に、立ち乗り式電動二輪車セグウェイが走っている。この大自然の中に、セグウェイが溶け込んでいる。この森を運営するランラン・ファームの林克彦社長は、セグウェイを導入するに至った理由をこのように語る。
「私たちは長年にわたってここで森づくりをしてきていますが、まだこの森に入ったことがないという人が大勢いるんですね。そこで、こうした人たちにできるだけ多くこの森に来てもらって、その魅力を体験してもらいたいと思い、セグウェイの導入を決めました」
そもそも、この十勝千年の森とはどういうものなのか。ランラン・ファームは、十勝毎日新聞社のグループ企業。実は、親会社の新聞事業こそが、十勝千年の森の背景にある。十勝毎日新聞社取締役も務める林氏はこう説明する。
「十勝毎日新聞社では、毎日約9万部の新聞を発行していますが、それだけの新聞をつくるためにはどうしても大量の紙、つまりその原料となる大量の木を消費することになります。森林は二酸化炭素の重要な吸収源であり、新聞制作で使用する紙を炭素含有率で木に換算すると、およそ1,100ヘクタールの森林があれば、失われた木々に本来固定されるはずだったCO2を相殺できるのです。これは「カーボン・オフセット」という考えで、現在の森の面積は400ヘクタールですが、ゆくゆくは部数に見合うだけのスケールを目指し、森づくりに取り組んでいるわけです」

イメージ図
単なる森づくりということではなく、十勝千年の森は地球温暖化など地球環境を第一義に考えているのである。それも、十勝の風土に適した森を目指しているという。
「現在、十勝に多いのは針葉樹のカラマツですが、これは信州の方からやってきた種類で、酸性が強く、土壌にも動植物に対してもあまり良い影響を与える樹種とはいえません。そこで、どんぐりなどの広葉樹の森に変えていきたいと思っています。広葉樹を増やすと多様性が高まり、動植物全体によい影響があります。おそらく日本でも最先端の植栽の方法だと思っています」
地元の森林組合のアドバイスも受けながら、むやみに植林をするということではなく、自然の森の在り方を考えているという。現在、植林を進めているのは、"道産のナラ"といわれる北海道の在来種であるミズナラと、これも北海道に多く、昔バット材として使われたことで知られるヤチダモが中心。ランラン・ファームは1991年のオープン以来、すでに16年もの間、地道に植林作業を行ってきた。

セグウェイが森に誘導してくれる

林 克彦社長

こうした環境を考えた森づくりの一方で、十勝千年の森は地域振興にも力を入れている。親会社である十勝毎日新聞社が掲げる「いつも地域と共に」という社是に基づき、森づくりと平行して、十勝に人を呼び込むための観光資源となるさまざまな施設を設置、併せて各種イベントも展開している。
世界的に著名な英国のガーデン・デザイナーのダン・ピアソンが手がけた、十勝の風土、営みを感じさせるガーデンがある。それに森、草原に現代アートを配した「現代アート 森の回廊」、地域の特産品などを食材として使ったレストラン、付加価値の高い農産物の開発、さらには天然の山菜やキノコなどの販売、ヤギのチーズ作り、ホース・ライディングなど多彩なプログラムが組まれ、さまざまな行事が行われている。
ここに新たな観光資源として加わったのが、セグウェイを使った森のガイドツアー。これまで用意されていたツアーは、ガイドスタッフと一緒に森の中を歩いて回るコースのみだったが、「セグウェイガイドツアー」は移動が快適な上にセグウェイに乗ること自体も楽しく、徒歩による散策とは一味違った魅力で来場者から好評を得ている。
「環境に優しく、その上、足を運んで下さった人にはきっと楽しい思いを味わってもらえるような森づくりをしていると自負しているので、どうしたら今以上にたくさんの人たちを森に誘導できるかと考えていました。そのようなとき、日本SGIからセグウェイのオフロードモデルが出たということを知り、さっそく導入することにしたのです。セグウェイは電動ですから環境にも優しいですし、十勝千年の森に加えるツールとしてはまさにぴったりでした」
セグウェイに乗るということ自体もひとつの目玉にはなるが、そのセグウェイを使って森に誘導するというのが最大の目的だという。現在は年間におよそ5万人がこの十勝千年の森を訪れるというが、森の中まで車を乗り入れられるようにしてしまうと、排気ガスは森の中に振りまかれるし、敷地も荒れる。車はあくまでも駐車場にとめてもらい、自分自身の足、もしくは新たな選択肢として加わったセグウェイという移動手段を用いて森やガーデンを楽しんでもらう。セグウェイは排気ガスはもちろん出さないし、タイヤが道を踏み固めることもしない。

Segway
十勝千年の森が導入したセグウェイは10台。セグウェイガイドツアーの正式スタートは2007年6月だが、それに先立ち、5月のゴールデンウィークの期間中に試乗体験会を行い、その不思議な乗車感覚が多くの来場者を魅了した。セグウェイツアーには最大10台(うち1台はガイド)の参加が可能で、約2時間かけて十勝の森や平原などを散策する。
「最初に乗ったときは、世紀の大発明というだけあってその乗り心地に驚きましたが、しかしスキーに感覚が似ているのですね。北海道の人はスキーが得意な方が多いですから、特になじみやすいと思いました」
簡単に乗れるとはいうものの、セグウェイツアーに参加するためには、万が一にも事故などが起きないよう様々なルールを守ってもらう必要がある。参加者には事前に15分ほどの練習が義務づけられ、ガイドから注意事項も徹底指導されるほか、年齢制限なども定められている。

千年の森ではなくセグウェイの森?

十勝千年の森

林氏は以前から、セグウェイについてはよく知っていたという。
「セグウェイの発明者として知られるディーン・カーメンの隣に住んでいる人が、スターリング・カレッジという環境系の学校の学長で、2年に1度はこの十勝千年の森に来られるのです。そこで一緒に森を歩いたりして、環境学を学んでいるのですが、その先生からセグウェイという乗り物のこと、そしてセグウェイがこういう場所にピッタリの乗り物だということも聞いていました」
しかし当初、社内でセグウェイ導入の話をしたところ、反応は今ひとつだったという。これまで実際に触れたことがない乗り物であるだけに、セグウェイが森の中でどのように機能していくのかイメージするのは難しく、一部には「森が破壊されてしまうのではないか」という声もあった。
「また、セグウェイというイメージが強くて、千年の森が本来持つ魅力、多様な動植物が生息する豊かな自然環境に注目してもらえず、セグウェイに乗れる森という印象を持たれてしまうのではないかと心配する人もいました。しかし担当者が実際にセグウェイに乗ってみて、そのイメージは一変しました。セグウェイに乗りながらしっかりとガイドもできるし、自分の足で歩くように自由に動き回れるのですから。やはりセグウェイの楽しさは乗ってみないと分からないところがありますね」
担当者だけでなく、同社の林光繁会長(十勝毎日新聞社社長)は、林氏の提案を聞いてさっそくサンフランシスコまで出かけ、その海岸線を回るSegway Authorized Tourに参加。実際にセグウェイツアーの楽しさを体感した。そこですぐに、日本SGIの「セグウェイツアー・オフィシャル・パートナー」の第一号として登録したという。
林氏自身は「セグウェイは一回乗って終わりということではなく、乗れば乗るほど楽しさが増してくるものですし、何度も森に来ていただいて、いろいろな楽しみ方をしていただけると思っています。試乗ツアーでのお客さんの反応もよく、ほとんどの人がまた乗りに来たいとおっしゃってくれました」と評価している。
6月からスタートするセグウェイツアーでは、ガーデンや森を散策するとともに、海抜400mほどの丘に上って十勝平野と日高山脈が織り成す素晴らしい景観を一望することもできる。セグウェイが、十勝千年の森へと人を誘い、森が持つ様々な魅力を十分満喫させてくれそうだ。